「代替伴侶」
約190ページの小説、白石さんにしてはコンパクトな小説
「人口が爆発的に増え、「代替伴侶法」が施行された近未来。
伴侶を失い精神的に打撃を被った人間に対し、最大10年間という期限つきで、
かつての伴侶と同じ記憶や内面を持った「代替伴侶」が貸与されることとなった。」
不妊で悩んでいた隼人とゆとりの夫婦。ある日、ゆとりは隼人に別の男性との間で妊娠したことを告げ、隼人の元を去ってしまう。
失意の隼人は「代替伴侶」の貸与を人権救済委員会に申請し、それ以後隼人はゆとりの記憶を複写された「代替伴侶」と生活を共にする。
ところが、今度は隼人が「代替」のゆとりの許を去ることになる。すると「代替」のゆとりはなんと隼人の「代替伴侶」を申請し、それが委員会に認められてしまう。こうして元の夫婦二人の関係は破綻したが、代わりに「代替」同士が共に仲睦まじく暮らすという皮肉な状況が出来する。そもそも「代替」の二人には、自分たちが「代替」であるという自覚が持てないようにプログラミングされているのだ。
その様子を見ながら生身の隼人とゆとりは、あらためて自らの夫婦のかたちが当初から大きく変質してしまったことを思い知り衝撃を受ける。
「代替」の二人の関係は、あり得た未来の、もうひとつの自分たちの姿なのだ。
そして「代替伴侶」には、始動から10年という期限が設定されていた。まず「代替」のゆとりが死を迎えた瞬間に、生身の隼人はある決意をする――。
インタビューで白石さんはこのように言ってます
白石一文が考える、結婚することの意味ーー最新小説『代替伴侶』の思考実験で気づいたこと
https://realsound.jp/book/2024/10/post-1819175.html
「白石:もう僕が持っていた引き出しの中身は、スカスカです。歳をとってきたので思考実験的な小説しか書けない。今の若い人や女性のことも、もうわからない。だから、もう1回リセットして、人の話、女性の話を聞いて書いていこうかなとちょっと思っています。」
ラストの流れは結構無理くり感があったのですが、その後の展開は少し気になりました
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